隅っこの部屋

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

ターナー展

turner1.jpg


ターナーの初期の緻密な水彩画と、晩年の輪郭もおぼろな油彩画と、共通点があるとしたら
描かれている空気感だろう。光や英国特有の気候を表現する事にこだわっていた事は諸解説にもある。

今回、順路に沿って見ていくうちに突然気付いた。
月が印象的な小さめの絵「月光、ミルバンクより眺めた習作」で、その月の光の近くの町のシルエットに
視点を固定し見ていた瞬間に、そこに居るとしか思えないほど絵の中に引き込まれたのだ。
その近くに展示されていた「嵐の近付く海景」でも、船の手前の荒れた波の面を見ている時に
その場にいるような感覚にとらわれた。
ターナーの絵は、どうやらその空間に中に入れるようだ。
人の視界というのは、はっきりと焦点を合わせて見られる範囲は意外と狭いという。だからその絵の
一部分をじっと見ていると、周辺部分の情報はそぎ落とされて、
空気感を描くのに長けたターナーの絵では、そこに包まれたような感覚になるのかもしれない。

2007年にBSハイビジョンで再放送された(本放送は2003年10月)「世界美術館紀行」のテートブリテン編、
"渦巻く大気 ターナーのスケッチ帳"を見て以来、ずっとターナーが好きと言ってきたのだが、実際はなかなか
本物のターナーを見る機会は無かった。
昨年の「巨匠たちの英国水彩画展」につづき、今回二回目のターナー。しかも本格的な展覧会で、
ようやくターナーのほんの一部が分かったような気がした。
「世界美術館紀行」のテートブリテン編は、ターナーに触れるには本当にいい番組で、
湖水地方などの風景とターナーの絵がどちらも美しく、そのスケッチブックは本当にすばらしかった。

この機会に「世界美術館紀行」の録画をもう一度見返すと、18世紀末、イギリスでは国内旅行が盛んに
行われるようになり、挿絵付き旅行書が多く刊行され、その元となる絵を描くという仕事が画家の新たな
収入源となったとの事で、ターナーの国内旅行スケッチが紹介されていた。
その絵も今回の展覧会では展示されている。

ターナーの絵を見ていると、当時の画家の、あるいは旅行書を持った人達の旅の空気まで楽しめる気がしてくる。
風景を伝える事を目的の一つにした絵も多いので、当時の人達がこの景色を見ながら旅をしたのだと
思って見るのは自然な事だろう。

ここまで緻密に塗っていて、どうして途中で色付けをやめている?というスケッチもたくさんあり、
一方で、全体の雰囲気だけをつかむ為の粗いスケッチも多数。こんなのまで飾っていいのかというような、
作品とも言えないようなものも多数。
図録によると、ターナーは大量の絵を描きながら未完の作品も多いそうで、全体を見ればそれも納得。
どれが習作でどれが未完でどれが実験なのか、解説が無ければ分からないものもある。
絵の注文を取る為の見本の習作は空気感だけを描いたようなもので、
この段階だけでも表せているものがあると掴んだから晩年のような作品が出来たのかも?

最後の部屋に飾ってあった「湖に沈む夕陽」はほぼ形のある物は何も描かれておらず、ただ夕陽と思われる
白いかけらが左の少し下にあり、そのかけらも歪んだ絵の具の点だ。
でも正面に立って絵の真ん中を見つめていると、視界の端でそのかけらが太陽らしく輝いて見えて来る。
一部を見つめて周辺を感じるこの方法、ターナーの絵の楽しみ方の一つとしておすすめしたい。


ターナー展の公式HPは→こちら

  1. 2013/11/23(土) 16:38:43|
  2. 美術展・展示会など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<絵本カード | ホーム | 装画を描いた本>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://keyaki7.blog.fc2.com/tb.php/28-e9dab5ad
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。