隅っこの部屋

並河靖之 七宝 展

namikawa.jpg

以前、鑑定団に出品され解説TVRを見て印象に残った並河靖之の七宝。
ほかに何度か美術番組などで見かけて、ずっと気になっていたところ、
大好きな庭園美術館で展覧会が行われるという事で、ぜひ見なければと足を運んだ。

あまりに細かい細工なので、その密度から考えられる常識的な大きさを
勝手にイメージしていたのだろう、実際に見た時の第一印象はどれも「思ったより小さい」だった。
こんなに小さい中にこの細工。その工程を知っていればなおさら、驚嘆する。
今回、庭園美術館では無料で単眼鏡の貸し出しが行われており、これがとても鑑賞の助けになった。


美術展に行くと、作品リストにごくごく簡単な印象などを書き込んで行くのだが、今回は
ボキャブラリーも貧困になりがちだ。だがそれは作品の質とは比例しない。

序盤で見られる、40番「藤花菊唐草文飾壺」の感想メモ
・・・ 「宝石のよう 色の組み合わせが上品 描くだけでもすごい」
"描くだけでもすごい (のに七宝の技法で細工しているなんて信じられない) "というのは
これから出てくる多くの品にも当てはまる感想で、分かっていても言いたくなるのだ。
ここに至るまでの順路の中で一番気に入ったので
「今日の一番かも?」と思ったが、まだまだ先は長かったのだ。


以下、他の作品でも
「きれい かわいい 洗練されている ほしい 最高」などの言葉が続く。


22番の「花丸唐草文棗」では、
きれい、かわいい、愛らしい、ほしい、の他に
「持っている色を使いつくしてまとめるテクニックを習得」と書いた。
検索しても出てこないので紹介のしようがないのが残念だが、
黒地に散る何種類もの花が丸い柄に重なって花てまりを散らしたようで愛らしい。
高価な品にこんな事を言うのもなんだが、
雑貨やさんを見て回るような楽しさがあり、同じ柄のハンカチでもいいからほしいと思う。
ここに来て「今日の一番はこれか?」と思う。が、まだまだ先がある。


褒めるところしか見つからないように思えるが、
こうしたものはお気に入りを探す目で見ていくと、当然好き嫌いも出てくるものだ。
少し慣れてくると
「いい作品とは思うが、息をのむほどでもない」  と、偉そうな事を考え始める。他にも
「赤地はいいが、しょせんは虫」
「蝶もこれくらい控え目の方がいい」
など細かく表現されているがゆえに、虫が苦手なのが感想メモに現れてきてしまう。


さて、本館を出て新館に移ると、これまでとはまたレベルの違う作品に出合うことになる。


どうしたって好きにならずにいられないのが、
今回の展覧会のチラシにも使われている、
38番「藤草花文花瓶」
こちらも想像より小ぶりで、それゆえに愛らしく装飾的に垂れている藤と下の方にひっそり
小さく咲いているタンポポなどの草花、上下の文様部分と黒字の割合、バランス、すべてが好ましい。
うーん、今日一か?


だが、それ以上にお気に入りという意味では
49番「花鳥図飾壺」が
とても気に入った。小さな蓋つきの壺で、蓋の部分から山吹の花が四方に広がっている。
この黄色が黒地にとてもよく映えて、なおかつうるさくない量と配置、下に鳥。
検索して出てくる写真はマットに見えるが、実物はつやつやしていて本当に奇麗だった。
38番の藤花と、どちらが一番かとても迷う。写真で見ると藤の方がいいけれど、
実物をいつまでも見ていたいという意味ではこちらが上かも。

(それにしても、名前がどれも模様の説明と物の形の組み合わせなのでぱっと見ても
どれを指しているのか分かりづらくて不便だ。検索してもなかなか目的の画像が出てこない…)


あと一つ、
63番の「蝶に竹花図四方花瓶」は
「この題材にこの形、ハマっている。静寂 絵としても物としても洗練」
感想らしい感想を引き出したのは、やはり絵の力だと思う。
平らな絵ではなく、この形のもの(四角い壺)の角面を使ったからこその世界観。
絵を引き立たせる背景としての黒が多い中、この黒はまさに静寂を描いた色だと言えそうな空気感。
竹も花も蝶も、背後の闇も、この構図以外ありえないと思えるような完璧な世界だった。

"絵が描かれた壺や花瓶"という物ではなく、襖絵や屏風絵のように壺や花瓶とい
う形態の地に絵を描くジャンルとして出来上がっていると思った。

いつか、今回展示終了で見逃した「四季花鳥図花瓶」も見てみたい。


  1. 2017/04/03(月) 10:59:02|
  2. 美術展・展示会など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0