隅っこの部屋

ヴァロットン展

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ヴァロットン展(三菱一号館美術館)

「日曜美術館」と「ぶらぶら美術博物館」で予習してからの鑑賞。

とにかく全体的に「構図の力」を楽しめる美術展だった。
それが一番際立っているのは白黒の版画なのは事前の予習どおりだが、油絵の方からもそれを感じた。

画家の家族の食卓を描いた「夕食、ランプの光」(NO.48)などは黒の使い方がシリーズ物の版画に近い
感じがする。
この絵と、奥さんの家族を描いた「ポーカー」(NO.53)は近い場所に飾ってある。
描かれている登場人物(妻と連れ子や妻の親戚)への複雑な感情や空気はTVで放送された解説通り
だが二つとも色、形が「きれい」だというのが生の絵を見て感じた印象。
マイナスの感情を表すのに不快な色の組み合わせを使うのはよくある事かもしれないけれど、そういう
手段を使わず代わりに明暗と表情と構図を駆使している。
前半に飾ってあった女性のヌードはそういう意味での綺麗さが感じられなくて私は好きではなかった
けれど全体を通しては色の組み合わせやメリハリがきれいな絵が多くて好感を持った。

そういった冴えた綺麗さで最初に足を止めたのが「月の光」(NO.29)。
この絵はきっと売店でハガキになっている!
好きな人も多いに違いない。黒々とした地平になんとも言えない鉄色の空、金泥を使ったかのような
月と雲と鏡のような川と。暗くて、心地よいと思わない人もいるかもしれないけれど、間違いなくきれい
で引きこまれる。

版画は、これを見ると、ヴァロットンがいかに「上手い」か良く分かる。
男女の色々なシチュエーションを描いたシリーズ(No.35~No.45)は、構図はもちろんだけど、やはり
ポーズも含めた表情が大事だなあと思う。奥さんの支度を待つ旦那さんのイライラ感とか!
そして題名。題名をきちんと考えて描き始める、あるいは付けるのもテクニックだなぁ…としみじみ。

群集をかたまりの形としても一つ一つの人間としても面倒くさがらずに描く事、とか色々と勉強になる。

版画の中に「オクターヴ・ユザンヌ」(No.59)という肖像(というか似顔絵?)があったが、この人は
ヴァロットンの木版を最初に評価した人、という解説があり、だからだろうか
他の木版の人物と比較して似顔絵としてとても丁寧で、知らない人にもかかわらず「似てる!」と
言いたくなるようなものだ。こういう部分に好意的な感情が現われている気がして面白い。

後半の方に行くと"マティエール(質感)の豊かさ"という章がある。だが、ここで紹介されている物よりも、
前半の最初の方にあった「帽子を持つフェリックス・ヤシンスキ」(No.4)という肖像画の方で質感については
感心することしきりだった。
服のマットな黒とシルクハットの艶のある黒の表現がすばらしくて、「この肖像画で描きたかったのって
結局人物よりもこの黒の布の質感の違いなんじゃ?」と思わずにはいられなかった。

さて、今回の美術展の呼び物でもある「ボール」(No.22)だが、事前に色々見すぎたせいか、
生の絵を見たからといって改めて思う事もあまり無かった。横からと上からと二つの視点が見せる効果に
ついて色々と解説があったが、手前の部分を俯瞰にして遠くの物を横から見せる事は
(少々極端で横長の絵ではあまり無いかもしれないが)それほど不自然とは思わない。
でも日曜美術館で角田光代さんが書いていた物語はちょっと怖い感じがとてもよかった。ヴァロットンの
展覧会の絵を題材にもっと色々な話を聞かせて欲しいくらい。

手前を俯瞰にする表現ではもう一つ「白い砂浜、ヴァスイ」(No.31)が高さ、広さ、遠さがよく現われていていい感じ。

色々と刺激を受ける展覧会で、参考になる事も多く、面白かった。

9月23日まで

  1. 2014/09/12(金) 16:59:11|
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